TCFD 気候関連財務情報開示タスクフォース
I-neグループでは、2023年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同を表明しました。当社の気候変動のリスクと機会を認識し、成長機会とリスク低減・予防のためにTCFD提言の枠組みを活用し、積極的な情報開示に努めていきます。
ガバナンス
当社では、2022年より取締役会の諮問機関としてサステナビリティ委員会を設置しています。サステナビリティ委員会は、気候変動に関する対応方針や取り組みに向けた課題等を検討・協議し、重要事項は年に1回以上取締役会に報告します。取締役会は、戦略の策定や進捗、リスク管理プロセスの監督に責任を負っており、その際に気候変動のリスクと機会の観点から精査しています。
当社は、中期経営計画の中でマテリアリティ目標を策定し、気候変動を含む主要なESGテーマを特定しました。関係部門は、KPIを活用した進捗管理を行い、サステナビリティ委員会は年に2回以上の頻度で進捗状況のモニタリングを実施すると共に、その結果を取締役会に報告します。
サステナビリティ委員会は代表取締役社長を委員長とし、委員は社外取締役及び各部門を所管する執行役員の中から選任しています。サステナビリティ委員会は、気候関連の企業目標の設定並びに目標に対する進捗状況のモニタリング、気候関連のリスク・機会の評価及び管理を行っています。サステナビリティ委員会の事務局として、分科会や各部門の担当者で構成されるサステナビリティ推進会議を設置し、具体的な気候関連リスク・機会の検討を行っています。サステナビリティ委員会は、サステナビリティ推進会議の報告を受け、活動をモニタリングしています。また、気候関連リスク・機会の評価を踏まえ、具体的に実施する対策をサステナビリティ委員会にて決定し、当該内容を執行役員・各本部長の出席する会議を通じて関係部門に対して取り組み推進の指示を行っています。
戦略
当社では、成長戦略として2028年から2030年を目途に売上1,000億円、営業利益率15%を目指す旨を公表しています。気候変動が当該目標に及ぼす影響の重要性を評価するために、TCFDフレームワークに沿って気候関連リスク・機会を特定し、営業利益等に与える影響を基準として、定性的・定量的な影響度の評価を実施しています。
また、1.5℃シナリオ(IEA World Energy Outlook、NZE 2050など)、4℃シナリオ(IPCC RCP 8.5、SSP 2)の気候シナリオを用いて、製品・サービスの購入から販売製品の使用・廃棄に至るまでの当社のサプライチェーン全体を対象に影響を分析しています。TCFD開示の初年度である今回は、シナリオ分析では1.5℃および4℃の気温上昇を想定し、2025年(短期)・2030年時点(中期)・2050年時点(長期)の3つの時期に関して気候変動によるリスクと機会を検討しました。気候変動の影響は中長期的に大きくなる可能性があると評価しており、以下の表では2030年時点の評価結果を示します。
当社は、マテリアリティ目標としてカーボンニュートラルの実現を掲げており、2025年にはScope1、2排出量の100%削減、2040年にはScope3排出量の100%削減を目標としています。当社のScope3排出量はScope1、2排出量と比較すると大きく、また、シナリオ分析の結果、関連するリスク・機会も大きいことが判明しました。これを受け、一次サプライヤーのアセスメント等を通じた協働の実施、商品廃棄物の削減、容器・資材に使用するバージンプラスチックの削減などの個別の取り組みに関し、目標期限を設定し取り組みます。
区分 | 種類 | 想定される気候変動リスク・機会 | 事業活動への影響 | 影響度 | 影響度 |
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移行リスク | 規制 | GHG排出/削減に関する法規制の強化 | 炭素税が原材料や容器の製造時CO₂排出に対して課され、それらが価格転嫁されることによる商品購入単価の上昇 | 大 | 1.5℃ |
規制 | プラスチック規制強化による容器コストの上昇 | OEM先が課されたプラスチックリサイクル費用が価格転嫁されることによる容器コストの増加 | 小 | 1.5℃ | |
市場 | 変化する顧客行動 | サーキュラーエコノミー推進への対応のための原料調達、容器及び開発費の追加的なコストの発生 | 中 | 1.5℃ | |
所有から使用への価値観変化による販売の減少 | 中 | 1.5℃ | |||
評判 | 消費者の嗜好の変化 | 脱炭素取り組みの遅れによる消費者からの不支持、ブランド・社会的信頼の喪失、事業機会の減少 | 小 | 1.5℃ | |
物理リスク | 急性 | 気象災害の増加 | 洪水等の激甚化によるサプライチェーンの分断、生産・物流機能の停止 | 中 | 1.5/ 4.0℃ |
慢性 | 平均気温の上昇 | 気温上昇により労働環境が悪化し、従業員の生産性の低下、生態系の変化による海洋由来や農作物由来の原材料調達コストの上昇 | 中 | 1.5/ 4.0℃ |
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機会 | リソースの効率 | 物流プロセスの効率化 | 積載率が向上し、物流の効率化によるコストの削減 | 中 | 1.5℃ |
製品・サービス | 低排出エネルギー源の使用 | 再エネ・省エネ設備の導入によるエネルギーコストの削減 | 中 | 1.5℃ | |
市場 | 消費者の嗜好の変化 | エシカル商品の需要の増加によるシャンプー・トリートメントの事業機会の拡大、顧客の増加 | 大 | 1.5℃ |
※ 影響度評価(財務影響):大(10億円超)/中(1-10億円)/小(1億円未満)
リスク管理
当社は、気候関連リスクの特定・評価にあたり、サステナビリティ委員会をはじめとした会議体で協議を行い、管理、対応についても検討を進めています。また、当社は、「リスク管理規程」を制定し、代表取締役社長を委員長とするコンプライアンス・リスク管理委員会にて様々な経営上のリスクについて検討・対策をしています。それらの状況をもとに、気候関連リスクについて対応策の実施状況並びにその効果についてモニタリングを行っていく予定です。
指標と目標
当社は、気候変動問題が地球規模の課題であり、事業においても影響を及ぼす大きな問題であると捉え、「カーボンニュートラルの実現」をマテリアリティの一つに掲げており、2025年までに温室効果ガス(Scope1、2)のネットゼロを実現します。また、脱炭素経営に向けたアクションを進めるため、2040年Scope3を含めた温室効果ガスのネットゼロを目標に取り組みを進めて参ります。2023年のシナリオ分析においては、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに 1.5℃に抑える努力を追求する」というパリ協定の目標の達成と脱炭素社会の実現を見据え、1.5℃シナリオを検討しました。