未来に向けた人事・採用ポリシー改革に込めた想い。
未来に向けた人事・採用ポリシー改革に込めた想い。
I-neは2023年に中期経営計画を発表し、それに合わせて人事戦略も大幅な見直しを図りました。実際にどのような考えを持って、どのような改革を行ったのか。最前線に立つ、人事・採用担当の3名に聞きました。
※所属、役割は取材当時のものです。
執行役員CHRO HR本部 本部長
平山 明
老舗からベンチャー、人事コンサルから人材会社・事業会社まで、さまざまな角度からの人事経験を経て、2023年1月にI-neへ入社。24年HR本部の本部長に就任以来、先頭に立って人事戦略を描き、アップデートを指揮する。
HR本部 HRBP部
須田 有里奈
転職エージェントにて営業とキャリアアドバイザーを経験し、2022年6月にI-neへ入社。HR本部に所属し、部門担当人事として事業部内の組織課題に向き合いながら全社横断領域的に中途採用・新卒採用に関わる業務を担う。
HR本部 HRBP部
村田 優佳
多業界で営業や人事を経験し、2016年7月にI-neへ入社。入社後3年間は人事領域の業務を担当、次の3年間で事業部での営業・営業企画・事業推進を担った後に、再び人事部門へ戻り部門担当・カルチャー浸透領域を担当する。
目指すのは、ミッション実現を志す能力密度の高い組織
――2023年2月発表の中期経営計画に伴い人事戦略をアップデートしたとのことですが、どのように変わったのでしょうか?
平山
まず、「MISSION実現を志す能力密度の高い組織」というキーワードを打ち出しました。私たちI-neは、「幸せの連鎖」を世の中に広げることがミッションであり、存在意義としています。これを広げていくためには事業を成長させなければならず、そのためには組織を成長させなければなりません。
組織の成長と言うと社員が増えることをイメージしますが、今後労働人口減少に伴う採用競争の激化は明らかであり、安定的な人材確保の難易度は高まります。ならばもう一方で、「一人ひとりの能力が高まることも組織成長の形ではないのか?」「個々の生産性を高める構造づくりへ考え方をシフトすべきでは?」という意識が高まり、冒頭のキーワードへつながっていきました。
須田
“能力密度の高い組織づくり”という指針が掲げられたことで、私自身の動きも変わりました。以前は各部署の本部長がそれぞれに組織づくりをしていて、人事は各本部長の希望や決定に応える役回りでしたが、自分の考えを持って提案できるようになった。「会社の指針がこうだから、人事目線ではこうしたいです」「この選択のほうが人事戦略に沿っています」という風に、人事として自分たちのバリューが発揮しやすくなりました。
村田
たしかに。本部長をはじめマネージャーたちも、「自分の考え」だけじゃなくて「会社の考え」としてメンバーに対して説明しやすくなったのかなと。仲間が増える中で、人や組織に対して皆が同じ方向を向けるようなメッセージになっていると感じます。
――制度面にも反映されたと聞きました。実際はどうですか?
平山
2024年1月に人事制度を改訂しましたが、その際のポイントは、成果に根差したメリハリをつけるということ。例えば、以前は高評価の社員はだけでなく、低評価の社員も一定の幅で昇給していた点を見直して。成果に対し、報酬がより直結する仕組みになりました。同時に昇給率がアップしたので、きちんと自分のバリューを発揮して目標を達成すれば、高い報酬を実現できます。
村田
昇給率の上昇とあわせて、個人の成果に直結しない福利厚生は思い切って廃止の決断もしてますね。在籍年数に起因するような年功序列っぽい制度は以前からほとんど無かったのですが、近年の人事制度改定のたびに、業績や結果に報いるというスタンスが反映されていると感じられます。
須田
他には、特別休暇の内容をどのような社員でも取得しやすいものに見直しました。一例としては、家族の看護のために使える「看護休暇」を「ライフサポート休暇」に改め、併せて「家族」の定義を広げることで、社員の多様な価値観に添った制度に変更しました。
平山
やはり、一人ひとりの能力密度=生産性を上げるには、実際に働く社員がどうすれば能力を発揮できるかという観点が重要で。働き甲斐と働きやすさを両輪として、それらを実現できる環境をどのようにつくり、担保していくかを考えて取り組んでいます。
能力密度が上がれば利益が上がり、その分を人件費に再投資できて、各自の報酬も上がる。また、未来の成長投資に資源を寄せることもできる。そのサイクルをしっかりと回し、皆が実感できるようになって初めて成功だという思いで、今はまだ色々と仕込んでいる最中です。
村田
そうですね。具体的な内容については今後、人的資本開示で公表していきます。
欲しい人材を自分たちで、全力で採りに行く
――人事戦略に合わせて、採用戦略も変化しましたか?
須田
採用活動については、2022年までは人材紹介をメインとしてエージェントの方に頼る部分が多くありましたが、2023年以降はダイレクトリクルーティングに切り替えました。
と言うのも、I-neが選考基準で最も重要視するのはバリューマッチとカルチャーマッチ。ですが、それは書類上で分かるものでもないですし、マッチする方が自然と集まるものでもなく、エージェントの方に全工程をお任せできるものでもないんですよね。
そうなると、やはり自分たちで探してスカウトしたり、積極的に採用イベントを開いてカルチャーやバリューを発信したりする必要があると切り替えて。今はほぼ自分たちの力で採用活動を行っています。
平山
これは大きな変化で、コンバージョンも上がっていると思います。ダイレクトリクルーティングはこちらから狙って行くので。接点を持てている方々の当社とのマッチ度は確実に上がってきていますし、それは人事としての生産性にも寄与しているはずです。
須田
自分たちで探す方針に変えたことで、各組織長の意識も変わったと感じます。応募を待つだけではなく、積極的に面接に参加して応募者の方と話すようになったり、リファラルが推進されたり。
また、自分が採用した人に対して、きちんと責任感を持って関わり、一緒に成長していこうという意識が高まったようになったかなと。振る舞いや行動の変化は素敵なことだと感じます。
村田
採用プロセスの変更としてはもう一点、適性検査を導入しました。能力密度を上げるために、まずは一定の基準を揃えるという意味での導入です。
平山
ただ当然、適性検査の結果は一つの基準ではあるけれど、合格点に満たなければ全て一律で不採用かと言うと、必ずしもそうではなくて。「結果を見るとこういう論点がありそうだから、組織としてどう受け入れて活躍いただけるか考えましょうか」という風に、きちんとアクションにつなげられるようになったことが大きいと思います。
村田
あとは、採用の意思決定プロセスに対して今まで以上に我々人事が介入するようになりましたね。面接への同席はもちろんですが、適性検査の結果や組織の状態を踏まえて、物申すようになったというか。
平山
確かに、これまで人事が意見を表明したり合否判断をしたりといったことはほぼ無く、現場が採用したいならするスタンスでした。それが今は、我々もNOをぶつける。人事としても事業を成長させるための採用にコミットし、魅力的なご経験やスキルをお持ちでも、いまのI-neにFITしない方は信念を持って判断し、FITする方は全力で獲得に動くというメリハリがついたのは、大きな変化だと感じています。
――採用と言うと、今後は新卒採用にも力を入れていくそうですね?
須田
はい。新卒採用は2016年から行っていますが、毎年採用人数が0~5人程度に留まっていたため、現状の社員構成は約9割が中途入社。そこに対して、今後は新卒入社の割合を増やしていく方針です。直近で2025年4月には9名が入社予定です。
平山
現在、I-neの経営陣の多くは40歳前後です。そこで20年後の経営体制をどうつくっていくのかを考えた時に、ポイントの一つとして新卒採用に力を入れる判断をしました。
また、現状の社員構成は30代前半~40代前半が大半で、20代前半はほぼいない。そこを増やさないと、組織の持続性が保てないという危機感もあります。
あとは最初に話した通り、今後人材確保が難しくなるのであれば、今から広く若い方々を採用し、社内でしっかりと育て、そこから柱となる人材をも生み出す構造づくりが必要だとも考えています。
須田
実際、新卒入社の皆はそれぞれに活躍しています。当初は想定していなかったグローバルな仕事を任されたり、新規ブランドを立ち上げたり、マネージャーに抜擢されたり。会社としても期待していますし、本人たちも成長したいと高い意識で努力している印象です。
面接という名のディスカッションで相互理解を深める
――面談・面接は、どういった方針で展開していますか?
村田
I-neの面談は、選考に進むか否かを応募者側にもご判断いただく場。その後の面接は選考の場となり、都度お互いに次のステップに進むか・進まないか、を判断する場だと考えています。
これまでのご経験やスキルなども伺いますが、面接でもわりとディスカッションに近いイメージ。I-neの抱える課題を話し合ったり、応募者側からご質問をいただいてこちらが答えたりしています。機密事項以外はだいたいお話ししています。
平山
私は最終段階の面接に入ることが多く、そうなるとほぼディスカッションがメインですね。中途採用の場合、私から聞くことはシンプルに2つ。転職にあたり、それ相応の叶えたいことや譲れないことは何なのか。それと、I-neという会社の印象です。その後は、気になることを聞いていただければ何でも答えるというスタンスですし、I-neの実情についてはこちらからも伝えるようにしています。
須田
私も面接では良いことだけではなく、I-neが抱える課題などを赤裸々にお話します。しっかりと伝えることで、応募者の方も覚悟を持ち、自分がI-neでどうやってバリューを発揮できるのかを考えた上で入社していただけると思うので。
平山
そうですね。入社後のギャップを無くすためにも、聞かれても聞かれなくても、組織課題はつまびらかにします。
以前はマイナスな情報を言わないほうが採用しやすくて良いという思想もあったかと思いますが、昔に比べて我々採用チームも強くなって、会社も大きくなって、採用競争力も上がっていった中での変化と言いますか。事実を伝え、その上でも入社を希望される方を採用したいと、シフトチェンジできました。
また、“能力密度の高い組織づくり”の中で、人ひとりを採用することへの責任感が高まったというのもあります。
――応募者の方からはどういった質問がありますか?
平山
多いのは、人事制度についてと、配属先の組織が抱える課題についてですかね。
須田
私は初期段階の面接に入ることが多いので、「会社にはどんな人がいますか?」「どういう人が活躍していますか?」といった質問が多いです。ただ、I-neには色々なタイプの人がいるので、バリューを体現する人、以外の言葉ではとても答えづらい(笑)。
平山
それで言うと、「経営陣ってどんな人ですか?」「経営陣との距離はどうですか?」というのもよく聞かれます。あとは、成果を出すのは大前提として「私はこういう働き方をしたいけれど、実際にできますか?」「こういう働き方で成果を出せる環境ですか?」といった、働きやすさの実現性についてはよく聞かれる印象です。
須田
新卒採用の場面だと、「何年後にどうなれますか?」といったキャリアパスについてよく聞かれます。ただ、現状は新卒入社の社員がたくさんいるわけでも、決まったルートがあるわけでもなく、「あなた次第です!」としか返せないのですが。
なので、「あなたはどうしたい?」「それを実現するためにI-neでどんなことができる?」という話をしますね。こういう時に、自分でキャリアを拓いていくワクワク感を感じられる方でないと、入社しても難しいかなとは思います。
村田
そもそも会社の歴史がまだ18年ですからね。ロールモデルや成長ルートみたいなことを質問いただいても、そういったものの正解は特に無いと思ってるので、一緒に考えましょう、としか答えられない。逆に言うと、「自分はこうだと思うんです」が成立しやすい。
そういう意味でも、面接は一般的なかしこまった質問リストをなぞっていくものではなく、「こういう現状なんですがどう思います?」みたいなディスカッションスタイルになるんです。
――応募者の方によって全然違うやり取りになると?
村田
そうですね。面接内容も回数も、オフラインなのかオンラインなのかも変動します。場合によっては選考途中で、ご入社いただいた場合に一緒に働くことになるメンバーに会ってもらったり、違う組織の人に面接の同席を頼んだりすることもあります。
平山
なので、色々話しましたが、確固たるプロセスはほぼ無い(笑)。応募者の方に合わせて柔軟に設計します。
バリューズを体現し、活躍できる人とは
――最後に、改めてI-neにはどういう方が向いているか? どういう方と一緒に働きたいか? 教えてください。
村田
最近特に思うのが、肩の力を抜いて、頑張れる人。I-neでは、「これが正解だ」「これ以外は間違っている」とかを思いこみ過ぎず、一人で背負い過ぎずに働く人のほうが、パフォーマンスを発揮している人が多いです。ファジーなことも変化も多いので、バリューズをただ真面目に盲目的に追及するのではなく、変化に対しても一定の陽気さというか、気にしすぎない精神を持ってやれる方が良いなと思います。
須田
私は、I-neが掲げるミッションと、個人が考えるキャリアの重なりが大切かなと思っています。よく面接の際に、「I-neのフィロソフィーを見て共感しました! 素敵だと思いました!」と言われるのですが、共感だけでは物足りなくて。なりたい自分に向かう道に、そのフィロソフィーが重なっていることが重要です。I-neに魅力を感じるだけではなく、自分がそれを体現したいと思い、行動に移そうとしている。そういう方でないと、入社後にいまの社員との温度感にギャップを感じる部分もあると思いますし、そういう方と一緒に働きたいと思っています。
平山
I-neに限らず、その組織にいる意味を見出した人は、バリューズを体現し成果を出す人なんですよね。なので、I-neに所属する意味をきちんと見出せる人と一緒に働きたいです。会社としても、そういった人に対しては全力で育成しますし、機会を提供しますし、成果を出せば報酬にも反映するというスタンスです。
そして、人事としてはやはりそういった方が入社して、能力を最大限に発揮できるための環境を整える責任があると考えています。まだまだできていない部分、足りない部分があるので、そこはしっかりとやっていきたいと思います。
中長期的に将来を見据え、人事戦略と採用戦略についても新たな指針を打ち出したI-ne。そこに込めた想いを理解し、共に歩み、成長したいと感じていただける方との出会いを、I-neは求めています。